学生ともプロとも違う、社会人テニスの見どころとは?
実業団スポーツ部に、どのようなイメージをお持ちだろうか。企業に属しながらも、毎日練習に明け暮れ、有名な大会に挑戦するチーム? もしくは、通常業務を第一優先とし、サークル活動の延長のように楽しく活動するチーム? そのどちらとも違うのが、九電グループテニス部。仕事のやりがいも、テニスの達成感も諦めず、その高度な両立を目指している。
実業団テニスにおける日本最高峰のトーナメント「日本リーグ」は、プロ選手も等しく出場できる珍しい大会。その中において、プロ選手が一人もいないのに大会の常連となっているのも、九電グループテニス部の特徴だ。
業務は他の社員と同様にしっかり働き、退勤後は大会に向けて練習に励む。「どちらも本気」は果たして可能なことなのか、男子キャプテンの古賀さんと女子キャプテンの吉松さんに伺った。
平日20時に繰り広げられる、白熱のラリー
とある平日の夜。九州電力香椎競技場の、ラグビーコートやクラブハウスが並ぶ一角にあるテニスコートに灯りがともる頃、一人、また一人と選手が集まってくる。思い思いにウォーミングアップを終えると、すぐさま白熱したラリー。コートサイドで見ていると、度肝を抜かれるようなスピードでボールが行き交い圧倒される。
現在の活動メンバーは、男女ともに所属会社も、仕事内容もさまざま。平日の練習は、集まれるメンバーでスケジュールを調整し、自主的に運営しているという。
それにしても、この迫力。仕事を終えた後とは思えない。
学生テニス界のスターが集まるワケ
九電グループテニス部の選手の多くは、学生時代から輝かしい成績を残してきた、テニス界の注目選手たちだ。吉松さんは、大学時代にインカレ準優勝、学生ランキング4位を記録。古賀さんは、大分のテニス強豪校から東京の大学に進学し、インカレでダブルス準優勝を果たした。
なぜこうも強い選手が、九電グループに入ってくるのか。それは、テニスに打ち込める環境が整っているからだと、吉松さんは言う。「九電グループは、テニスだけでなくラグビー部など他の実業団スポーツも盛んです。スポーツを受け入れる土壌が、当たり前にあるんだなと感じました」(吉松さん)。
古賀さんも、関東での就職も考えたが、九州に戻ることを決断した。関東には、プロ選手を多く抱える“競技特化型”の採用スタイルを持つ企業も多いが、古賀さんは、現役引退後のことを考えたという。「選手を終えた後のキャリアでも、ちゃんと自分らしく活躍できることが重要かなって。九電グループにいた選手たちの引退後の活躍も知っていたから、安心できたんです」(古賀さん)。
社会人1年目、両立なんてできっこない!
しかし、いざ学生から社会人になってみると、想像を超える大変さだった。社会人としての振る舞い方もわからず、慣れない業務に追われ、テニスどころじゃない。気づけば、練習は週1回の土曜日だけ。体力の低下で思うようにプレーもできず、次第にコートから足が遠のいていった。
「こんなはずじゃなかった……」
吉松さんは、2年目を迎えた頃に「このままでは駄目になる」と一念発起し、意図的に大会へのエントリーを増やしていった。練習へのモチベーションを高めることで、「仕事と競技を両立させる前提で、日々の過ごし方を組み立て直した」と話す。
時間の不足を、知恵で乗り切るために
壁に直面したのは古賀さんも同様だ。大学時代と比較すれば激減した、練習に充てられる時間。そのギャップに苦しむ中でたどりついたのが、「今の自分に足りないものは何か」「何を最優先すべきか」と自問し、効率を徹底的に追い求めることだった。
「練習時間が多いほど上手になれるかというと、そうでもないのがスポーツの面白いところ。限られた時間だからこそ、必死に頭を使って効率を考えるようになり、自分のプレースタイルそのものが大きく変わったと感じます」(古賀さん)。
現在は、走り込みや筋力トレーニングといった、コートに立てない時間でできる基礎体力づくりにも重点を置く。残業になりそうな日は早朝に練習時間を設けるなど、あくまで業務をベースに、必要な練習時間を逆算して割り出すスケジュール管理を徹底している。
テニスを通じた、人間的成長
自身も元日本リーグ出場選手であり、テニス部の監督も務める帆足さんは、「テニス部の活動は、技術を磨く場であると同時に、社会との関わり方を学ぶ場でもある」と語る。
「入社当初は、仕事と練習のサイクルをつくることに精一杯で、周囲の支えにまで意識が及ばないことがほとんど。それが2年、3年とキャリアを重ねるにつれ、周りの環境に支えられて自分たちはプレーできていると実感できるようになります。そうすると、期待に応えようと頑張れたり、感謝や配慮ができるようになったりして、人間的にも大きく成長します。技術を突き詰めればいい、というだけではないのが、実業団テニスの大きな価値でもあると思います」(帆足さん)
勝敗のシビアな世界に身を投じ、真剣勝負に挑めるのは人生の限られた時間だけ。この挑戦の過程こそが、ひとりの人間としての大きな成長につながるのだ。
日本リーグ優勝を目指して
戦後の復興さなかの昭和29年、“九州電力硬式テニス部”として発足して以来、わずか1年足らずで実業団対抗戦に参戦するなど、創部当初から数々の大会で存在感を示してきた九電グループテニス部。その歴史を背負いながら挑むのが、実業団テニス界最高峰の舞台「日本リーグ」だ。
プロ選手も数多く参戦するハイレベルな戦いの中で、いかに知力と体力を尽くして勝ち抜いていくか。古賀さんも「日常の業務では味わえない、胸の高鳴るワクワクする瞬間」と目を輝かせる。惜しくも2025年度は日本リーグファイナルステージへの進出は叶えられなかったが、チャレンジはこれからも続いていく。ぜひ皆さんも、熱き応援とともに今後の展開を見守っていただきたい。
プロフィール
九州電力株式会社 古賀さん
九電みらいエナジー株式会社 吉松さん







