第65回博多どんたく港まつりの写真 第65回博多どんたく港まつりの写真

毎年、ゴールデンウィークの福岡の街をにぎわせる「博多どんたく港まつり」が、今年も例年通り、5月3・4日に開催される。

春の陽気に包まれるこの2日間、福岡市の動脈たる明治通りはパレード会場に姿を変える。市民や地元企業の有志たちが仮装姿でしゃもじを叩いて楽しそうに公道を練り歩く傍らでは、街のあちこちに作られた演舞台でにぎやかな踊りが披露される。電飾で車体を飾った花自動車が各所を走り、港では船にまつわる催しもの。伝統ある博多松囃子は三福神(福神・恵比須・大黒)と、棧敷台を引く兒流の計四流れが市中を祝って廻り、最後はみんなで「総おどり」。

……つまり、福岡の街全体が祭りの舞台になる市民参加型の祭り。それがどんたくだ。

福岡で暮らす人にとってはすっかりおなじみの風景だが、よくよく考えると、祭りの時間も範囲も大きすぎやしないか。本当は、まだ知らない事実があるのではないだろうか?

そこで、九電グループの「ずっと先まで、明るくし隊」を率いて毎年パレードに参加している常連、九州電力送配電の平川さんから、どんたくの本丸・福岡市民の祭り振興会事務局の出水さんに、どんたくにまつわるお話を根掘り葉掘り、聞いてもらった。

「福岡市民の祭り振興会」の写真 「福岡市民の祭り振興会」の写真
「福岡市民の祭り振興会」事務局長の出水さん(左)と九州電力送配電の平川さん(右)。出水さんは15年ほどどんたくに携わっているというどんたく生き字引のような方。

スケールがでかすぎて逆に見えにくい?「どんたくって何なんですか?」

 
今日はお忙しいところありがとうございます。どんたくもいよいよ目前になってきましたね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
今はスタッフみんな、バタバタしてまして。毎年のことなんですけど、大変で(笑)
 
あと1か月ほどですもんねえ。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
表から見ると華やかな祭りなんですけど、裏では細かい調整の連続なんですよ。特に警備計画ですね。道路の使い方、時間の区切り方、人の流れのつくり方、全部きっちり詰めておかないと。無事に開催することがいちばん大事ですからね。
 
参加する側としてはワクワクしていますけど、いろんなご苦労があるんですね。でも、本当に楽しみです。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
そう聞くと救われます(笑)
しゃもじを叩きながら練り歩くパレードの写真 しゃもじを叩きながら練り歩くパレードの写真
「市民が思い思いの仮装をしてしゃもじを叩きながら練り歩くパレード」というイメージが強いどんたくだが……?©福岡市民の祭り振興会
 
今日はちょっとあらためて、博多どんたくについて教えていただきたいなと思っていまして。そもそもの始まりから聞いてもいいですか?
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
深いですよ~(笑)「博多どんたく港まつり」の源流は「博多松囃子(はかたまつばやし)」という、847年前の平安時代から続く、街の平和と繁栄を祝う祝賀行事。博多にずっと根づいてきたものですね。そこへ戦後、福岡市が行っていた「港まつり」が重なり、さらに市民の祭りとして「どんたく」が加わったんです。

この“どんたく”という名前を使いだしたのは、明治時代に一時禁止されていた「松囃子」を復活させる際に広がり始めたもので、オランダ語の「ゾンターク(Zondag)」=「休日」を語源とする言葉です。当時の博多で、にぎわいや祝いの催しの呼び名として広がっていったということです。

つまり、博多松囃子、港まつり、どんたく――この三つの流れが長い歴史のなかで重なりあうことで、今の「博多どんたく港まつり」となったのです。
 
ひとつのルーツではなくて、いろんな流れが合わさってきたんですね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
そこがどんたくの面白いところで。松囃子に港の行事、パレードに演舞台、花自動車も。いろんな楽しみ方が入っているけど、最後にはちゃんとひとつの祭りになる。例えるなら、いろんな具がひとつにまとまって博多らしい味になる“がめ煮”みたいな(笑)
 
なるほど(笑)わかりやすい!
平川さん
平川さん
福岡の郷土料理がめ煮の写真 福岡の郷土料理がめ煮の写真
「がめ煮」とは、鶏肉やれんこん、ごぼう、にんじん、しいたけ、こんにゃくなど、さまざまな具材を一緒に煮込む福岡の郷土料理。実際にはあまり使われないが、「がめくりこむ(寄せ集める)」という博多方言が由来という説があるらしい。

戦後復活80年。焼け野原で“祭りをやる”と決めた人たちがいた

今年のキャッチフレーズは、「どんたく復活80年 今年も祝いめでたで日本一!」。今年で65回目なのに、なぜ80年?そこには、どんたくの根っこにある“復活”の歴史が関わっている。

 
今年のキャッチフレーズにもある“復活80年”って、どんたく65回とどうつながるんですか?
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
そこ、突っ込んでほしかったとこです(笑)昭和37年に「福岡市民の祭り」となった「どんたく」から数えると今年で65回なんですが、その前に、戦後の松囃子の復活があるんです。終戦の翌年、まだ焼け野原だった博多で松囃子をやった。その復活から80年目、ということなんですよ。
 
え?終戦の翌年に、もう祭りを復活させたんですか?
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
そうなんです。たぶん、祭りどころじゃなかったはずなんですよ。でも、それでも祭りをやると決めた人たちがいた。だから、どんたくは、ただにぎやかなだけじゃなく「人を元気づける」とか「街を前に向かせる」という、根っこがあるんです。
焼け跡を進む松ばやし傘鉾 焼け跡を進む松ばやし傘鉾
終戦の翌年、焼野原の博多……強い想いが松囃子を復活させた。©福岡市民の祭り振興会

震災のあとも、コロナ禍でも。どんたくが持っていた“復興への心”

 
2011年、東日本大震災のあと、あえて実施したことにもつながるお話ですよね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
震災のあと、“祭りなんてやっていいのか”という空気が強くて。自粛ムードも濃かったし、実際にいろんな催しが中止になりました。
 
それでも、どんたくは歩みを止めなかった。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
どんたくは、戦後の街で市民を元気づける祭りだったという背景があります。だからこそ、“どんたくから元気を届けることもできるんじゃないか”という考えがあったんです。募金を集めたり、経済を回して支援につなげたり、そういう意味も含めて。
 
祭りの開催そのものが、人の支えにもなるんですね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
そう思っています。どんたくは、ただ浮かれるためだけのものではないですから。
花自動車の写真 花自動車の写真
戦災の跡が残る福博(福岡・博多を表す呼称)の街で、路面電車を花で飾り走らせた「花電車」をルーツに持つのが現在の「花自動車」。「どんたくと言えばこれやろ」という通なファンも多い。©福岡市民の祭り振興会
 
九電グループは震災後しばらくパレードに参加できなかった時、違う形で祭りを応援できないかと考えたんです。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
清掃活動をしてくださったりね。どんたくって沿道に人がたくさん集まるから、どうしてもたくさんごみが出るんです。本当に助かりました。

九電グループがパレード以外の形で関わったのには、“出られないから離れる”のではなく、“出られなくても祭りに関わりたい”という思いがあった。単に恒例行事だからではく、地域と共にある企業として“地域の人たちとの絆をつくる場”だと考えているからだ。しかし、その後のコロナ禍では、さすがに2年の中止を余儀なくされた。

 
コロナ禍の時だけは中止期間が2年ありましたね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
緊急事態宣言もあって、さすがにどうしようもなかったです。ただ、復帰は比較的早かったほうだと思います。2022年には短縮版として、マスクをしながら3時間程度の時間短縮でパレードをやりました。
 
完全な形じゃなくても、まずは戻していこうと。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
少しずつでも祭りを取り戻すことに意味があると思っていました。「パレードには出られないけど、どんたくには貢献したい」と、運営で支えてくれた企業さんもいて、本当に助けられました。だからきっと、どんたくがなくなることはないでしょう。形を変えながらでも、ずっと続いていく祭りなんだと思います。
パレードの写真 パレードの写真
コロナ禍の中止から復活した2023年のパレード。明太子色のマスクが明るい。©福岡市民の祭り振興会

ここは押さえたい。今年の見どころのポイントは?

 
今年ならではのトピックス、ありますか?
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
新しい演舞台ができることですね。新しくなった西日本シティ銀行さん、それからワンビルさんが加わります。再開発の影響で中心部の演舞台が減っていたのでうれしいことです。
 
福岡の街の変化とどんたくが、つながっていく感じがいいですね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
天神ビッグバンや博多コネクティッドという都市再開発の流れの中で、いよいよ中心部ににぎわいが戻ってきて、そこがどんたくの舞台になる。これはやっぱり大きいです!ところで、九電グループのみなさんのトピックスはなんですか?
 
今年も、キューデンヴォルテクスの選手や4足歩行ロボットが登場して盛り上げます!九州電力吹奏楽部が福岡大学吹奏楽部の皆さんとコラボする生演奏も、ぜひ聴いてほしいポイントです!
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
生演奏はいいよなぁ。パレードの雰囲気がすごく良くなる。見る側はワクワクするし、踊る側もすごく盛り上がりますよね!
 
私たちは社員だけじゃなくて、その家族も参加できるんです。せっかくのゴールデンウィークですし、会社の行事で終わらせず、家族も一緒に楽しめるものにしたいなって。私たちは毎年、上限の200名で参加しています!
平川さん
平川さん
「ずっと先まで、明るくし隊」の4足歩行ロボットの写真 「ずっと先まで、明るくし隊」の4足歩行ロボットの写真
「ずっと先まで、明るくし隊」ではロボットも踊る。©九州電力送配電

“美味しいものはあるけど観光地がない?”を新たな企画で払拭

どんたくの話は、いつのまにか福岡の街そのものの話にもつながっていった。

 
今年は、どんたくと絡めた街歩き企画も新たに考えていらっしゃるそうですね。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
はい。これはどんたくだけの話ではないんですけど、福岡ってよく“美味しいものはあるけど観光地がないよね”って言われませんか?
 
たしかに、言われがちです。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
でも実際にはあるんです。櫛田神社の周辺もそうだし、お寺も多い。福岡城跡だってあります。ただ地元の人もスポットとしては知っていても、面白いポイントって意外と知らないんですね。だから今年は「どんたく観覧」と「街歩き」をセットにした企画を考えました。歴史を少し知ってからどんたくを見ると、街の見え方も変わるんじゃないかと思うので。
 
今日のどんたくの話も同じですね。知らなかったことを知ることで、今年のどんたくは見え方が変わりそう。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
そういう意味でも、今年はあらためて博多松囃子を見てほしいです。戦後の復活から80年の節目。ここでどんたくのルーツを感じてもらえると嬉しいです。
博多松囃子の写真 博多松囃子の写真
2日間かけて街のあちこちで祝賀を行う博多松囃子。三福神は馬で移動しているので、遭遇するとちょっと驚く。©福岡市民の祭り振興会
出水さん
出水さん
 
ず~っと移動しているから、会えるとラッキーなんですけど、実は現在地を確認できる「博多松ばやし三福神いまどこプラス」というアプリもあるんです。スマホ片手に追いかけるのも面白いと思います。
 
へ~!今の時代ならではの楽しみ方ですねえ(笑)
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
三福神と帯同する傘鉾(かさぼこ)の下をくぐると、無病息災のご利益があると言われているので、見つけたら、ぜひくぐらせてもらってください。
 
そうしてみます!
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
どんたくは長い時間やってるから、自由にあちこち見て回るのがいいです。全部見ようとしなくても、自分の好きなやり方で楽しめるお祭りです。
 
私は、最後の総おどりに毎年圧倒されてます。
平川さん
平川さん
出水さん
出水さん
 
総おどりは最高です!見ている人も、いつの間にか輪に入ってしまう。あれこそ、市民の祭りの姿だと感じてうれしくなるんです!見るだけじゃなくて、参加するのが楽しいって言ってくれる人、実は多いんですよ(笑)
 
ですよね!私も今年のどんたくが待ち遠しい(笑)本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございました。また当日、お会いしましょう!
平川さん
平川さん

博多どんたくは、みんなが主役

今回の対話を通して何度も浮かび上がってきたのは、どんたくが、あちこちに主役がいる祭りだということだ。少し雑多だけど、ちゃんとまとまっていて、にぎやかで、味わい深い。だからどんたくは、博多らしい文化を煮込んだ“がめ煮”なのだ。そして、それを美味しく味わうために、ぜひゴールデンウィークは博多の街へ足を運んでほしい。

櫛田神社の写真 櫛田神社の写真
撮影をした櫛田神社は、どんたくをはじめ福岡の祭りを愛する”のぼせもん”にはおなじみのスポット。博多松囃子の出発の場所でもある。